イタリア・トスカーナの秋のワインイベントでファンの多いのが、パンツァーノ・イン・キャンティのワインイベントです。
地元の人とツーリストが集まり、大賑わいをみせるパンツァーノ・イン・キャンティのワインイベント。毎年9月第3週の週末におこなわれます。私も毎年楽しみにしています。
パンツァーノ・イン・キャンティは、キャンティ・クラシコ地方にある小さな村で、グレーヴェ・イン・キャンティから丘をのぼったところにあります。
グレーヴェ・イン・キャンティは、フィレンツェから南に約30キロのところにある村。パンツァーノ・イン・キャンティは「黄金の谷」と呼ばれるブドウ畑が横たわり、それはそれは美しい景色が広がる地区です。キャンティ・クラシコ地方でも最も壮麗な景色のひとつだと思います。
ワインイベントは、そんなパンツァーノ・イン・キャンティの中心地の広場でおこなわれます。
グラスを購入し(30ユーロ)、生産者ブースを自由に回って試飲し放題というシステム。
22あるパンツァーノ・イン・キャンティの生産者が全部集まります。
パンツァーノ・イン・キャンティという地区にしぼった試飲ができるので、パンツァーノ・イン・キャンティのワインを知りたい人におすすめです。
また、パンツァーノ・イン・キャンティは、9割がオーガニック農法をおこなっている地区なので、オーガニックワインが好きなかたにもおすすめ。
イベント会場には、チーズやパンの屋台も出てお祭りムード満点なので、地元のお祭りを体験したいかたにもおすすめです。
といった具合で、多くの人が楽しめるイベントなのです。
ただし、広場は狭いので、混雑覚悟です。
今回試飲したワインをご紹介します。
テヌータ・デリ・デイ Tenuta degli Dei
ファッションブランドのロベルト・カヴァッリとその息子トマーゾが所有するワイナリー。イタリアを代表する醸造家カルロ・フェリーニがコンサルタントをつとめています。
キャンティ・クラシコは凝縮した果実味がありました。
スーパータスカンの「レ・レディーニ」は、メルロー90%、アリカンテ10%のブレンドでバニラやスパイスの香りが感じられ、しっかりした味わい。
オーナーと同名のワイン、「カヴァッリ」はカベルネ・ソーヴィニヨン50%、プティ・ヴェルド35%、カベルネ・フラン15%で、力強さがかんじられるパワフルな味わい。
パンツァネッロ Panzanello
グレーヴェ・イン・キャンティからパンツァーノ・イン・キャンティに行く途中にあるワイナリー。1427年からこの地でワイン造りを続けていて、エチケットにも大きく「1427」と書かれています。
キャンティ・クラシコには、サンジョヴェーゼにメルローが5%ほどブレンドされているとのこと。
ベリー系のフレッシュな果実を感じるキャンティ・クラシコでした。
テヌータ・カーゼヌォーヴェ Tenute Casenuove
17世紀からの歴史があるテヌータ・カーゼヌォーヴェ。2015年にフランス人のフィリップ・オーストリーが購入しました。彼は、ボルドーのオー・メドック地区のシャトー・マレスカスも所有しています。
キャンティ・クラシコは、フレッシュさの中にエレガントさがある味わいでした。
レ・フォンティ Le Fonti
パンツァーノ・イン・キャンティの村の中心近くにある小さな農園で、1994年からシュミット・ヴェタリ家が所有するワイナリー。
キャンティ・クラシコ・グラン・セレッツィオーネは、凝縮した果実とまろやかさが感じられました。
ロルチョ・ア・カ・ディ・ペーザ L’Orcio a Ca’ di Pesa
アウエルバハ夫婦が所有する小さなワイナリーで、2ヘクタールほどの畑で年間約1万本を生産しています。
キャンティ・クラシコは、サンジョヴェーゼとコロリーノ(5%)で造られ、なめらかな口当たりで美しい酸がありました。
モンテ・ベルナルディ Monte bernardi
1992年より前は栽培したブドウを売っていましたが、ブドウの品質が非常によかったため、ボトル詰めを始めたというワイナリー。
2003年にシュメルツァー家(ドイツ系アメリカ人)が購入して、ビオディナミ農法を始めました。
キャンティ・クラシコは、「バックする」という意味の「レトロマルチャ」という名前がついています。トスカーナの古き良き味わいを表現しようという想いでつけられた名前の通り、サンジョヴェーゼの酸味がしっかりと感じられるキャンティ・クラシコでした。
カステッロ・デイ・ランポッラ Castello dei Rampolla
パンツァーノ・イン・キャンティのビオディナミの老舗として有名なカステッロ・デイ・ランポッラ。スーパータスカンの先駆け的存在でもあります。
1739年からワイン造りをおこなっていたランポッラ家。1960年代にアルチェロ・ディ・ナポリ・ランポッラが、サッシカイアの醸造家として知られるジャコモ・タキスのコンサルディングにより、キャンティ・クラシコ地区で初めてカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドして造られた「サンマルコ」をリリース。一躍有名になりました。
この日は、キャンティ・クラシコの試飲がなく、白ワインの「トレ・ビアンコ・ディ・サンタ・ルチア」とスーパータスカンの「サンマルコ」がありました。
トレ・ビアンコ・ディ・サンタ・ルチアは、クヴェヴリ(素焼きの甕(かめ))で発酵される特徴的な白ワイン。おだやかな酸味でまろやか。いかにもナチュラルという味わい。
サンマルコは、しっかりしたカベルネ・ソーヴィニヨンと凝縮した果実感のあるメルローも感じるのですが、パンツァーノ・イン・キャンティのフレッシュ感のあるサンジョヴェーゼが感じられ、パンツァーノ・イン・キャンティのテロワールが感じられるスーパータスカンだとあらためて思いました。
レンツォ・マリナイ Renzo Marinai
パンツァーノ・イン・キャンティの村の中心から2.5キロほどのところ、白い砂利道をたどった先にあるワイナリー。まわりは緑に囲まれ、こんなところでは絶対おいしいワインができる、と思わせてくれる自然あふれる環境にあります。
ワインイベントのときは、いつもレンツォ・マリナイさん自身がブースに立ち、ワインを注いでくれます。
キャンティ・クラシコ、キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ、キャンティ・クラシコ・グラン・セレッツィオーネ、どれも濃厚だけど本当にエレガント。
フォントディ Fontodi
パンツァーノ・イン・キャンティのトップワイナリーといわれているフォントディは、コンカドーロが目の前に広がる最高のロケーションにあります。
サンジョヴェーゼ100%で造られる「フラッチャネッロ」は、サンジョヴェーゼ・スーパータスカンの最高峰ともいえる超有名ワイン。
フラッチャネッロが目当てでブースに来る人たちも多し。
美しい酸味だけどまろやか、濃厚だけど上品、しっかりしたボディで複雑な味わいだけどオーガニックの自然も感じ、とにかく高貴さが半端ないです。
キャンティ・クラシコは、凝縮感があり、なめらかでした。
リニャーナ Rignana
ハリネズミのエチケットのリニャーナ。ハリネズミはイタリア語で「リッチ」で、17世紀に所有者だったデ・リッチ家からきているそう。そんなエピソードがあると印象的です。
オーナーのコジモ・ゲリックさんがブースでワインを注いでいました。
サンジョヴェーゼにカナイオーロ15%をブレンドしているキャンティ・クラシコは、酸味がありながらも温かみを感じる味わいでした。
フェルチャーノ Felciano
パンツァーノ・イン・キャンティの村の中心からすぐのところにある小さなワイナリー。
まだ小作制度があった1964年に、モレッリ家はフェルチャーノで小作農民としてこの地にやってきました。その後、1977年にオーナーになり、現在に至っています。
フェルチャーノは、フェデラツィオーネ・イタリアーナ・ヴィニャイオーリ・インディペンデンティ(FIVI)に所属しています。FIVIとは、栽培からボトル詰めまで地元でおこなうワイン生産者が集まる協会で、比較的小さな生産者がメンバーとなっています。
すみれのような花の香り、ブルーベリーのような果実の香り、少しスパイス香も感じられ、フレッシュさもありながら、タンニンとまろやさかもあり、バランスのよいキャンティ・クラシコでした。
イル・パラージョ Il Palagio
ピッチーニ家とグアルドゥッチ家のふたつのファミリーが経営するワイナリー。
サンジョヴェーゼ100%のキャンティ・クラシコは、もぎたての赤系果実の香りで、フレッシュな酸味がありつつも、温かみを感じる味わいでした。
キャンティ・クラシコ・グラン・セレッツィオーネの「レ・バンボレ」は、二人の小さな女の子が描かれているキュートなエチケット(バンボレは人形の意味)。キュートなエチケットとは裏腹に、骨格のあるストラクチャーで、複雑なアロマで余韻が長い味わい。
たまたま私の隣にいたイタリア人も、このエチケットに興味を持ち試飲していました。
カファッジョ Cafaggio
1407年からの歴史がある名門ワイナリー。
大手ならではの安定した味わいで、安心感があります。
キャンティ・クラシコは、チェリーなどの赤い果実の香りで、ミネラルが感じられると同時にまろやかさもある味わい。
キャンティ・クラシコ・リゼルヴァは、赤い果実は熟した印象になり、スパイス香も感じられ、さらにまろやかな味わい。
ラ・マッサ La Massa
15世紀からワイン造りがおこなわれていた地を、1992年にジャンパオロ・モッタが購入したというワイナリー。
キャンティ・クラシコ協会からは離脱したため、キャンティ・クラシコのワインは造っていません。造っているのは、サンジョヴェーゼ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローをブレンドした「ラ・マッサ」、サンジョヴェーゼ100%の「カルラ6」、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、プティ・ヴェルドをブレンドした「ジョルジョ・プリモ」。
例年ジョルジョ・プリモも試飲できるのですが、今年はラ・マッサとカルラ6のみでした。
ラ・マッサは、サンジョヴェーゼのミネラル感や酸味が感じられつつ、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローのまろやかさも感じられるバランスのよい味わい。
カルラ6は、サンジョヴェーゼのミネラル感がはっきりと感じられ、複雑なアロマと力強いボディ。パンツァーノ・イン・キャンティのサンジョヴェーゼのすばらしさが実感できるスーパータスカンです。
パンツァーノ・イン・キャンティのワインイベントは、地元のワイナリーだけが集まって、地元の人も盛り上がる地元ならではの盛り上がりがあって、とってもおすすめ。
ワインイベントの同行もおこなっていますので、イベントに行きたいかた、ぜひお問い合わせください。